少し前までは、ほとんどの医師が患者について持っていた唯一のデータは、患者が自分の病歴を記述した記録でした。それに医療記録が追加されますが、患者が引っ越したり担当医を変えたりした場合、履歴情報が失われる可能性は非常に高いものでした。
今は、Epic Systems などで、これまでの断片的な患者情報の整理と追跡を実用化しています。医療従事者は担当している患者に関するより正確な情報を得られるばかりでなく、他の患者についての経過情報もわかります。見逃してしまったかもしれない情報にもアクセスすることができます。
ビッグデータの時代
昔は、保存すべき情報や調査分析すべき情報はあまりありませんでした。医療提供者が患者の治療のためにどこかに保存されたデータを利用するような機会はほとんどなかったでしょう。
医療科学の発展で様々な病気に対する治療の可能性が高まり、信頼できる医療データの必要性が劇的に増加しました。一方、そのデータを管理することに関しては対応が遅れていました。医師はデスクワークに慣れておらず、従来の記録管理システムは使いづらく洗練されていません。ここ数年の間に、やっと Epic Systems などの、臨床環境での記録管理に適した技術的リソースが出始めました。
この変革は時宜を得ていました。医療技術は、医療をより複雑にするばかりでなく、新たな費用が追加されるので、コストを抑えることが重要な課題となっています。医師はより多くの患者を診察する必要があります。ばらばらに散らばった記録を追跡したり、使い勝手の悪い記録システムを使って時間を無駄にする余裕はありません。
医療データ革命は、以前からあったものをより良くすることだけではありません。今までになかった新しいことを実現します。数千人の医師のメモに埋もれて、これまで検出できなかった相関関係やパターンが、ビッグデータ分析によって明らかになりました。ジカウイルスなどの流行の拡散状況は、対策につながる詳細な医療関係情報を提供する顕著な例です。
医療AIの利用
ビッグデータが現代医療に貢献するとともに、もう一つの革命、人工知能(AI)も医療に影響を与え始めています。ファスト・カンパニーのSean Captain氏によると、医療AIは研究やパイロット・プロジェクトのレベルから実働ツールに移行しつつあります。
もちろん、人間の医師の仕事がロボットに置き換えられるわけではありません。ここで想定している医療AIは、膨大な量のデータを記憶して分析する能力を備えて、医師、看護師、その他の医療専門家の負担を大きく軽減する種類のものです。調査会社 Frost&SullivanのVenkat Rajan 氏は、医師たちは「ストレスが多く、チェックしなければならないことが極めて膨大なので、見逃すかもしれないものがあっても不思議ではありません。」と述べています。医療AIは、忙しい人間が見落としがちなどんな些細なことも見落としません。
AIは、シンプルで慣例化した状況、たとえば患者への問診などを代行できるでしょう。症状や不快さの質や程度について質問し、それを医学用語を使って要約することができます。医師は、重要な項目をチェックするとともに、情報に基づいた分析結果も入手できます。たとえば、異常な症状が他の医師の患者の報告と合致するような場合があれば、流行になり始めている症状を特定し、監視体制を強めることができます。
インテリジェント・システムは医療分野への適応を模索され始めています。データに基づいたシステムは、私たちの健康と暮らしを向上させる大きな可能性を秘めています。医療ITの課題は、データとシステムを確実かつ安全に管理することです。
医療データの保護に関する詳細は、プログレスのホワイトペーパー、「データ保護のコンプライアンスを徹底するための7項目」、「医療データ保護のための課題とソリューション」をご参照ください。