Libra 自体は良くても Facebook が絡むと疑問

11月 19, 2019 セキュリティとコンプライアンス, MOVEit

Mark Zuckerberg氏はまだ Libra の作成を推し進めていますが、今の時点では明らかに彼に益するところはありません。彼は Facebook が信頼されていないことを知っています。

ユーザーのプライバシーに関して、Facebook にはお粗末な黒歴史があります。fb.com サイトのデータとプライバシーのセクションは、コメディアンや風刺家のジョークのネタ探しにはもってこいです。テクノロジー関連など、その他のセクションへの投稿が2011年から行われているのに対して、このセクションへの投稿がアクティブになったのが2019年初頭からであるという事実は注目に値します。プライバシーが考慮に値する事項とみなされていなかったことを示唆します。9月からのタイトルにはすべて、”Privacy Matters:” が組み込まれています。「プライバシーは重要」、誰にとって、なぜ、という点を聞いてみたいところです。

Libra に関する私の以前のブログをお読みいただければ、私が賛成派ではないことはわかるはずです。「Facebook が関与しているという事実だけで Libra には悪いイメージがついてまわる」ことが主たる理由です。Facebook の CEO がいくら「私がこのプロジェクトを推進しているのではありませんよ...」と主張しても、説得性を感じられず、自分のお金の管理を任せられるほど信用することはできません。

ただ、Libra から Facebook の関与が外されれば、まったく別の話になります。もちろん、それだけでは Libra の概念を受け入れるのに十分とは言い切れませんが。

コアにある価値観

Libra は、銀行口座のない人たちも通貨取引が可能になるという優れた社会的イニシアチブとして宣伝されました。スマートフォンとID認証だけあれば、先進国と同様にデジタルウォレットを使用できるようになります。そのアイデアそのものは立派だと思います。ですが、これを額面どおりに受け取ることはできますか?私にはそうは思えません。Mastercard、Visa、eBay、Stripe(Libra プロジェクトから抜けた元メンバー)もそうは思えなかったようです。この時点で Facebook ができる最善のことは、Facebook を Libra プロジェクトから完全に削除することです。ブランド変更を試みたところで、コアにある価値観が大きく変わるとは思えません。

「車輪の再発明」が必要か?

アイデアを著作権で保護することはできないので、ユーザーとデータプライバシーを尊重する別の会社が主導する形で、適切に展開されるのであれば、と思います。主導するのがなぜ Mozilla、Microsoft、または Apple ではないのでしょうか?

通貨名を Libra とせず、“Not A Cynical Approach To Expand Markets”(市場を拡大するためのシニカルなアプローチではない)またはシンプルに “Improved Banking System”(改善された銀行システム)とは呼べないのでしょうか?

Libra は全体的な概念としては優れたもののように聞こえるのですが、実際に開発作業を行う前に採用の障壁を特定して解決する必要があります。

グローバルな暗号通貨に対する潜在的な障壁には、以下が含まれますが、これらに限定されません。

  • 採用レベル – ユーザー、銀行、企業によって実行可能なソリューションと見なされる必要があります。
  • 銀行・金融規制 – 銀行と中央政府からの賛同が必要です。
  • 犯罪行為 – 本人確認と、プライバシー規制に従った関連データの処理が不可欠です。
  • トランザクションの認可ベースの分散化の実装 – Libra が削除したブロックチェーンのコア機能。Libra では、信頼できないかもしれないパートナーによって処理がコントロールされます。
  • ブロックチェーンの使用 – Libra をブロックチェーンと呼ぶことは、Facebook をプライバシー擁護者と呼ぶことに似ています。
  • 創設者メンバーの選定 – ターゲット市場とのつながりに必要なチャリティー以外、適切な関係者が Libra の創設メンバーに入っていませんでした。ビッグテック、銀行、本物の教育機関、セキュリティ専門家、プライバシーの擁護者などが入っていないことには違和感があります。
  • 金融取引に提供されるデータプライバシーのレベル。

これらの障壁が解決されない場合、採用しようと努力する意味があるでしょうか?

顧客満足のために

Libra によって提案された、ATM などを使用したまったく新しい物理インフラストラクチャの作成は、まったくばかげていますが、重要な問題を示唆します。グローバル通貨(あらゆる種類のお金)が機能するためには、(ユーザーレベルだけでなく)ユニバーサルな採用が必要です。ユニバーサルな採用が実現しなければ、場所に関係なく、ユーザーがすぐに現金を手に入れることができるようにする必要があります。

ユーザーが金銭がらみの処理に真の柔軟性を望む場合、現代の企業が提供するような様々な支払い方法に対応できる必要があります。PayPal を受け入れる人もいれば、Stripe、Payoneer、その他の方法を使いたい人もいます。

いずれの場合も、引き出しには銀行口座が必要です。そうでなければ、その支払い方法を受け入れる会社との取引だけに制限されます。そして、そのようなプロバイダに関するフォーラムには、「不審なアクティビティ」、「凍結された資金」、などといったユーザーの苦情が詰め込まれています。

もし銀行が賛同して行動を共にするなら、支払いゲートウェイは必要ありません。ところが、銀行産業は変化には抵抗しがちで、今日でも多くの主要銀行のプラットフォームは時代遅れであり、アジャイルなフィンテックスタートアップや、格安手数料もしくは手数料無料の様々な支払いゲートウェイに太刀打ちすることができません。

重要なのは、仲介者、支払いゲートウェイ、ウォレットプロバイダを必要とすることなく、デジタル世界と現実世界を実用的な方法で統合することです。私の意見では、イノベーションを推進する必要があるのは中央銀行です。要請があればフィンテックパートナーは実装を支援するでしょう。

EUが加盟国間での銀行手数料を廃止できるとすれば、それ以前は不必要な手数料を要求していたということではないでしょうか?結局のところ、お金はデジタルで動いており、宅配業者が関与しているわけではありません。中国に目を向けると、中央銀行が人民元に相当するデジタル通貨を発行し、 通貨の世界的な利用を支援すると予測されています。他の国が追随するのを待ちますか?

最後に

このまま何も変化がなければ、Libra のグローバル通貨の試みは、イニシアチブを取り巻く問題が強調され、成功する可能性は低いでしょう。Mark Zuckerberg 氏は、「国際的な規制当局が何と言うかにかかわらず、米国の規制当局からの完全なサポートが得られるまで、製品またはこれ(Libra)の一部であるものをリリースする予定はありません。」と述べました。

前のブログにも書いたとおり、私は経済学者ではありませんが、中国のデジタル通貨への動きは、中央銀行が関与していて実装に問題がなさそうで、興味深く見ています。スウェーデンの中央銀行も、通貨のデジタル版である e-krona を検討しています。この動きは広がりつつあるようです。おそらく、Libra と同じ目標を、グローバルな通貨やプライバシーを失うことなく、達成することは可能なのではないでしょうか?

Michael O'Dwyer

An Irishman based in Hong Kong, Michael O’Dwyer is a business & technology journalist, independent consultant and writer who specializes in writing for enterprise, small business and IT audiences. With 20+ years of experience in everything from IT and electronic component-level failure analysis to process improvement and supply chains (and an in-depth knowledge of Klingon,) Michael is a sought-after writer whose quality sources, deep research and quirky sense of humor ensures he’s welcome in high-profile publications such as The Street and Fortune 100 IT portals.