LegalTech: 法律業界のテクノロジー

投稿者: Michael O'Dwyer 投稿日: 2017年12月10

文書処理へのテクノロジー採用に関して、法律家の動きは鈍いようです。

デジタル化とは、ドキュメントをデジタル形式やプロセスに変換して紙の使用量を削減しようとする試みだと表現できるでしょう。賛否両論があるにしても、文書がデジタル形式になれば、用途が広がり、必要に応じて容易に配布できるという点は否定できません。

ただ、用途が広く配布が容易なことは手放しで歓迎すべき事態でしょうか?セキュリティについてはどうでしょうか?近年、電子情報開示という言葉がよく使われますが、法律業界はデジタル化の準備が整っているでしょうか?

LegalTech という言葉も散見するようにはなったものの、デジタル化にはなかなかつながらず、法律業界でテクノロジーを採り入れる機運が高まっているとは言えません。

「法律家にペーパーレスへの移行を持ちかける際、最大のネックは、現状に満足しているという気持ちが彼らの根底にあることです。長年の間、紙のフォルダを使って問題なく仕事をこなしてきた弁護士は、変更する必要性を感じません。文書自動化を採り入れたクラウド・ベースのシステムに移行することのメリットを説明しようとしても、彼らは、それが自分たちにはうまくいかない言い訳を探そうとします。」と、オクラホマシティの The Urbanic Law Firm, PLLC の刑事弁護士、Frank A. Urbanic 氏は説明します。

抵抗は無意味だ

Urbanic 氏はテクノロジーの提唱者であり、変化が必要だと信じています。「クライアントや潜在的クライアントは、今後、紙のフォルダを使わない弁護士がどんどん増えていくのを目撃するでしょう。より新しい世代は、テクノロジーを使いこなすのに慣れています。現在の弁護士は、紙のフォルダを使ってファイルを管理することに特段の問題を感じることはないでしょうが、いつまでもそのままとは限りません。今起業している弁護士は、新しい局面に入ったとき、まだ紙を使用している弁護士よりもはるかに先を行っているでしょう。」

legaltech.jpgスタートレックTNG のセリフを借りるなら、「抵抗は無意味だ、お前たちは同化される」(ボーグのセリフ)というところでしょう。デジタル時代には、テクノロジーを避けたり、紙ベースのプロセスを維持することは合理的ではなく、紙ベースのオプションが時代遅れになるのは時間の問題でしょう。

法律家に責を帰すことは簡単ですが、彼らだけの責任ではありません。

「裁判所が使用しているシステムにも問題があると思います。弁護士は旧態依然とした裁判所のシステムに合わせなければならず、それがペーパーレス化できない言い訳になります。たとえば、一部の裁判所では、電子メールではなく、文書をファクス送信または郵送する必要があります。少なくともオクラホマ州のほとんどの郡は、証拠開示手続きを刑事弁護人と共有するためのデジタル手法を持っていません。したがって、紙のコピーをピックアップしてスキャンする必要があります。」とUrbanic氏は述べます。

まだ紙のフォルダを使用している弁護士には、電子化は余分な作業と見なされ、証拠開示手続きをデジタル形式で行うことに価値を見出すことができません。

幸いにも、改善の兆候はあります。

「証拠開示手続きをデジタルで共有するようになってきている郡もあります。デジタル化された証拠開示手続きが増加しつつある傾向は歓迎できます。トレンドは、確実に紙を減らす方向に向かっています。これをより早く察知する弁護士は、将来に向けてより優位な立場に立つことができるでしょう。」とUrbanic氏は話します。

先例になって業界をリード

刑事裁判においてデジタル処理が可能な部分はまだ限られていますが、Urbanic氏は、法的プロセスにデジタルのオプションがある限りはデジタルを選択して紙のフォルダを回避し、古い考えの人たちを啓発しようとしています。

「法廷の場で、検察官と事件について話すためにSurface Pro 4を開くと、人々は私を怪訝そうに見ます。私は、デジタル・ソリューションを活用しているオクラホマ州で唯一の弁護士かもしれません。私がやっていることは最先端なので、居心地悪く感じることはありません。いずれ、紙のファイルを持ち歩く弁護士が怪訝な目で見られるようになるときが来るだろうと信じています。」とUrbanic氏は自論を展開しました。

氏は実際に未来への準備しており、裁判所と法制度が時代に追いつくようになれば、初期投資コストは効率性によって十分ペイすると想定しています。

「時間の経過とともに、デジタル化された文書が増えていきます。案件管理システムには連絡先を追加しています。デジタル知識獲得ツールを利用して法律事務所に知識を集積しています。他の大部分の弁護士はこれらのことをまったく行っていません。私が、洗練された効率的な法律事務所を運営しているとき、彼らは必死で追いつこうとするでしょう。これらの効率的なプロセスを導入することで、クライアントに多大な価値をもたらすことができます。」とUrbanic氏は話します。

デジタル化はリスクを増大させるのか、減少させるのか?

Urbanic氏は、電子ファイルの利用が義務付けられるような状況からは程遠い時代で仕事をしている刑事弁護士です。しかし、氏は彼がとっているデジタル・アプローチが理にかなっていると主張します。それは、ビデオやオーディオを含むすべてのクライアントのファイルに簡単にアクセスできるからだけではありません。

「私は、デジタル化はリスクを軽減すると信じています。紙のフォルダを使っている人にこの話をすると、コンピュータがクラッシュしたり盗まれたらどうなるの、といった反応が返ってきますが、私はオフィスが火事になったらどうなるの、と質問する形で答えます。火事になればフォルダはなくなり、再び見ることはできません。私のすべてのファイルはクラウドに安全に保存されています。」とUrbanic氏は説明します。

これは確かに災害復旧と業務継続性プロセスに発展する有意義な論点です。

「コンピュータがクラッシュしたり盗まれたりしたとしても、新しいコンピュータを入手してクラウドと同期させれば事足ります。クライアント情報はたとえ損失したとしても最小限にとどまるはずで、すぐに通常通り仕事を続けられます。私の使っているSurface Proはパスワードで保護され、暗号化されています。私の事務所では、最高レベルのセキュリティ策を実施するクラウド・ベースのシステムを使用しています。クライアントファイルの格納用に設計されたクラウド・ベースのシステムからデータを盗むより、法律事務所に侵入してファイルを盗む方が簡単です。」とUrbanic氏は話します。

重要なことは、新しいテクノロジーを導入するとき、セキュリティが常に重視され続ける必要があることです。暗号化、パスワード、安全なクラウド・ソリューションを使用することで、Urbanic氏は自分の法律事務所とクライアントをデータ損失から守っています。これはデジタル化における重要な考慮事項です。

結論として言えることは、コラボレーション(クラウド、モノのインターネットなど)と高速ブロードバンドの利点は明白であり、電子ファイル使用が義務付けられるようになれば、法律業界にも容易に適用され得るということです。

Urbanic氏は、デジタルへの移行を検討している人にアドバイスします。

「オフィスにいなくてもクライアントの案件を処理できる能力はますます重要になると思います。これからは、弁護士はモバイルのクラウド・ベースの案件管理システムを持つ必要があります。私は、おそらく、モバイル機能が使えるよう設計された法律事務所を持つオクラホマ州で唯一の刑事弁護士でしょう。いつでもどこでも案件の作業ができる弁護士は、データをより深く分析でき、問題をより迅速に解決でき、究極的にクライアントにより大きな価値をもたらします。時間が経つにつれてクライアントはテクノロジーに精通していきますから、弁護士も同等にテクノロジーに精通していることを期待します。やがて、腕いっぱいに紙のフォルダをかかえた弁護士を見て、無駄で非効率的だと判断するクライアントがどんどん増えるでしょう。」

医療分野ではすでにデジタル顧客サービスモデルが確立し、先進的なテクノロジーの導入も始まっていますから、法律業界でも同様のことが可能でしょう。やがては、本物の法律専門家と、金目当てで人の弱みにつけこむ邪悪な「救急車追跡者」とを識別できるような手段も考案されるかもしれません。どう思いますか?デジタル化は今目指す価値がある目標ですか、デジタル化を義務付ける法律改正を待った方が良いですか?


Michael O'Dwyer
Michael O'Dwyer
An Irishman based in Hong Kong, Michael O’Dwyer is a business & technology journalist, independent consultant and writer who specializes in writing for enterprise, small business and IT audiences. With 20+ years of experience in everything from IT and electronic component-level failure analysis to process improvement and supply chains (and an in-depth knowledge of Klingon,) Michael is a sought-after writer whose quality sources, deep research and quirky sense of humor ensures he’s welcome in high-profile publications such as The Street and Fortune 100 IT portals.
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