電話やテキストメッセージを可能にする主要なビジネスモデルである携帯電話通信は、衰退しています。
そう言われても恐らく簡単には納得しかねるでしょう。携帯電話通信産業は成長しているように見えます。5Gの高速モバイルブロードバンドが現実になり、多くの人々が様々なガジェットをサブスクライブし、アメリカでは約60%の世帯が固定電話を保持せず携帯電話のみを使用するようになりました。これは20年前には考えられなかった現象です。さらに、パンデミックによるネットワーク使用の急増があります。
このように隆盛しているように見える携帯電話通信が衰退しているとはどういうことでしょうか?それには根拠があります。
一つには、電話機能を使って呼び出して話すのをやめてメッセージングに切り替える人が増えているということがあります。ネットワークを必要とするテキストメッセージではなく、インターネットを使用するメッセージングのことです。
メッセージングは非常に多くの人が好んで使用するようになりました。顔文字、絵文字、ミー文字、タップバックなどをうまく使って、その道のプロのように自分の個性をより豊かに表現することができます。電話とは違って前置きのように天気の話をしたりする必要はなく、電子メールのようなあいさつ文や署名なども必要ありません。
メッセージングは、短く、邪魔にならず、直接要点だけを伝えることができます。出張中の同僚にも、他の部屋にいる家族にも、遠く離れた場所にいる友人にも、まったく同じようにメッセージを送ることができます。セキュリティ意識の高い先進的サービスの場合は、従来のテキストメッセージではサポートされていなかったエンドツーエンド暗号化もサポートします。
そのため、モバイルメッセージングは、インターネットユーザーの70%がモバイルメッセージングアプリを使用し、モバイルインターネット使用量の約半分をモバイルメッセージングが占めるほど、飛躍的に多用されるようになっています。メッセージングアプリには様々なものがあり、地域によって好まれるアプリは異なりますが、アメリカでは、Facebook Messenger、Snapchat、WhatsApp などが多用されています。
二つめとして、通話の手段に音声ではなくビデオを使用することが増えている点があります。グループ通話の場合は特にビデオ通話が便利です。ビデオ通話は、過去3年間で推定175%の使用量の増加が見られ、ミレニアル世代の4人に1人が毎日使用しています。この統計は、Zoom などの新しい使いやすいアプリが注目され、仕事としてあるいは学習のためにグループ通話が爆発的に増加したパンデミック以前のものだという点にご注意ください。グループビデオ通話は、モバイルデバイスでも行うことは可能ですが、もっと大きな画面のラップトップやタブレットの方がずっと目的に適合しています。携帯電話会社にとっては不利なトレンドです。
少し前まで、ネットワーク上で何を使用できるかは携帯電話プロバイダが提供するものによって決まっていました。今日では、カメラやノイズキャンセリングイヤホン、ビデオ通話時にデバイスをシームレスに切り替える機能などを提供するガジェットメーカーが、ユーザーエクスペリエンスを豊かなものにし、ネットワーク上でできることは多様化しています。そのため、携帯電話番号の重要性は低下しており、所有するデバイス自体と所有するデバイス間でうまく同期できるかが、ユーザーエクスペリエンスの品質に直結します。
事態をさらに悪化させているのは、セルラーネットワークでの悪用になす術が見い出せないという現状です。2020年だけでも、米国の居住者の携帯電話に対して380億件のロボコールが行われ、1人当たり100コールにもなるという統計があります。多くは、地域の局番から発信されているように見えるフィッシングコールやテキストであり、ユーザーをだまして不正な IRS 対策費を支払わせたり、根拠のないことで法的措置を取ると脅迫したり、テキストメッセージで悪意のあるハイパーリンクを開くように誘導したりしようとします。
フィッシングはインターネットベースの電話によって可能になるため、世界中のどこからでも攻撃が可能で、訴訟を免れることができます。また、発信者IDシステムもフィッシングやロボコールに一役買います。発信者IDシステムは、元々、ごく限られた信頼できる大手プロバイダだけがサービスしていた時代に自宅電話ネットワーク用に開発されたものであり、発信者の入力を正しいものと想定して、プログラムされた番号を表示します。今日では、電話システムはオープンになっており、インターネットを介して多くの会社が電話サービスを提供できます。プログラミングで発信者を作成し、本当の発信元を隠して偽造した電話番号を発信者IDとして携帯電話に表示することができます。
ところが、そのような想定外の不正通話への認識が欠けていた電話会社には、通話をフィルタリングし、ロボコールを防ぐよう監視することは困難です。偽の発信者ID情報を検出することは困難であり、正当な通話を誤ってブロックすると、法的な問題が発生する可能性さえあります。不正通話をブロックするアプリを開発できたとしても、コストが高いので追加料金がかかるでしょう。消費者は、追加料金を払ってまでそのようなアプリを使うことはせず、モバイルデバイスをサイレントモードに保って着信やテキストを無視しようとします。必然的に、多くのミレニアル世代が、メッセージングとビデオ通話にどんどん移行していくと想定されます。
この、本来電話会社が負担すべきコストを消費者に転嫁するようなやり方を好まない消費者心理によって、サイレントモードに切り替えることを選択するという傾向は、セルラーネットワークの将来に深刻な影響を与える可能性があります。これまでの例からも、ミレニアル世代の消費者は、消費者の利益になることよりも組織の収益を優先するようなサービスにはすぐに愛想を尽かしやすいことがわかっています。
1990年代に遡ると、家庭用固定電話ネットワークが完全に主流でした。電話会社の主要な収入源は長距離電話への課金であり、今から思えば法外な長距離電話料金が設定されていました。1997年の長距離電話料金は1分あたり12〜25セントで、1992年から25%増加しました。この、濡れ手に粟のような状況を、AT&T 長距離電話の元責任者である Joseph P. Nacchio 氏は次のように述べています。「長距離電話は、アメリカで、違法なコカインの輸入に次ぐ、収益性の高いビジネスです。」
当時、携帯電話の加入者はわずか5,000万人で、全員が自宅に固定電話も持っていました。数年以内に、22〜40歳の世代はこぞってインターネットと携帯電話を利用するようになり、従来の電話ビジネスの構造を根幹からくつがえしました。
今日のミレニアル世代とそれより若い世代は、今ではアメリカ住民の過半数を超えました。彼らはすでに固定電話を持たず携帯電話だけを使っており、ケーブルサブスクリプションをやめてビデオストリーミングに移行しています。次には、彼らが携帯電話から移行するときが来るかもしれません。
Dr. Arun Vishwanath is an expert on the “people problem” of cybersecurity. He has authored more than two-dozen peer reviewed research papers on the science of cybersecurity. His research has been presented to the principals of national security and law enforcement agencies around the world as well at institutions such as the Johns Hopkins Applied Physics Lab, the U.S. Army Cyber Institute at West Point, and at cybersecurity conferences such as Black Hat.
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