このブログでは、「ナレッジマネージメント」という用語についての見解を示し、それが情報やデータとどのように関わってくるかについて説明します。
ここでは、他の人の説明を持ち出したり、用語の起源について議論したりするのではなく、まず、ナレッジマネージメント(knowledge management、KM)を、直接的および間接的にデータ/情報を収集・分析する手段として捉えることにすると提言しておきたいと思います。収集・分析されたデータ/情報は、関係者が実用的な知識として照合できるよう、流布されて共有され、意思決定やビジネス目標の推進に大きく寄与します。
上記は私独自の定義です。簡潔ではないかもしれませんが、重要なポイントは押さえていると思います。ただ、すべてではなく、例えば Salesforce はカスタマーサービスと販売のためのナレッジマネージメントツールと考えることができますが、その観点はここには含まれていません。データ、情報、ナレッジの違いを少し説明してから、KM プロセス全体について考察します。
データ/情報マネージメントはナレッジマネージメントと同じではなく、情報がすべてデータであるとは限りません。製造業の電子下請会社のプロジェクトに以前関わったことがあるのですが、まず、その経験に基づいてナレッジマネージメントの実際的な例を紹介したいと思います。
スマートフォンなど、同一の製品を製造する4つのラインがある典型的な製造現場を想像してみてください。それぞれのスマートフォンには複数の製造プロセスが含まれます。プリント回路アセンブリ(printed circuit assembly、PCA)、筐体(プラスチック)、ディスプレイ、相互接続するリボン/ケーブルとコネクタといったものがあります。使用する機器にもよりますが、プロセスは、基本的に、一連のシーケンシャルなステップと、自動タスクと手動タスクが含まれるロジカルなステップに分けられます。各ステップは、随時更新される文書化された手順と作業指示(情報)に基づいて決まっていきます。PCA には、初期のテストプロセス中に割り当てられたシリアル番号と国際モバイル機器識別(International Mobile Equipment Identity、IMEI) 番号が割り当てられています。すべてのステップは記録され、PCA および関与する一般作業員またはエンジニアに直接リンクされたデータ(テストデータ、再加工情報、責任者など)が作成されます。
その結果、現場で、または出荷前の監査中にスマートフォンに問題が見つかった場合、製造、テスト、および物流プロセスのすべての段階でのすべてのデータを即座に利用できます。そのユニットは作成されてからすべての段階において問題が存在していたのか、コンポーネントは変更または再加工されたのか、他のユニットにも目で確認できる故障パターンはあるか、簡単な OTA(Over The Air)アップデートで修正できる既知のソフトウェア/ファームウェアの問題なのか、などといったことをチェックできます。
問題は OTA アップデートで解決できるものが多いのですが、問題が解決できない場合は、解決策が見つかるまで分析する必要があります。解決策が見つかって、その特定の問題に対して将来のサポート照会時に誰でも利用できるようにデータベース化されたとき、それがナレッジになります。また、解決策を探る上で生産プロセスに改善するべき点があることがわかれば、それに対応するドキュメントを更新して今後の作成プロセスに生かすようにして、継続的な改善に役立てることも重要です。
上記は製造業における例ですが、この手法は、産業や企業の規模にかかわらず広範に適用可能です。
使用されるツールやリソースには進展があるものの、ナレッジマネージメント・プロセスの基本は変わっていません。品質マニュアルと定義されたドキュメント管理プロセスを必要とする ISO 認定を取得している企業も多く、KM のエレメントがすでに様々な形で採用されていると思われます。
データ収集の方法とツールは会社ごとに異なりますが、例えば日次や週次のレポートとログ、そして勤務レポートなどが収集されます。収集されたら、組織独自のルールに従って、わかりやすく整理されます。
詳細情報は、ビジネス要件または運用要件に従って決まります。アウトプットとしては、データのグラフやその他の視覚的表現、またはデータの「全体像」が確認できるものなどが考えられます。詳細情報が得られたら、パターンや関係を分析します。改善できる部分がないかという視点でも分析を行います。専門家がレビューを行った上で、様々な視点での、またはそれぞれの部門向けの、各種の正式なレポートが作成されます。
複数のレポートが組み合わされ、統括されて、新しい成果物が生み出されます。運用プロセス全体に関連するものが主になります。新しい概念とプロセスフローは組織のナレッジベースで定義され、すべてのユーザーが(たとえば、内部の場合はイントラネット上で)簡単にアクセスできるようセットアップされます。ナレッジベースには、FAQ、使用例、ウェビナー、ホワイトペーパー、その他のドキュメントなどが含まれます。
培われたナレッジは、将来の意思決定の際にも活用できます。あるアクティビティのプロセスが安定していると認められれば、そこで習得されたナレッジの多くを新しいアクティビティを設定するときに利用でき、一から作成する必要がなくなります。
ナレッジマネージメントは、どんな企業にも有用であり、いろいろなケースで活用できます。包括的なソリューションの実装は簡単な作業ではなく、専用サーバー、高価なソフトウェアライセンス、リソースなどが必要になってくるので、クラウドでの KM ソリューション(Salesforce など)がよく利用されます。コストが削減できるのと同時に、ユーザーがどこからでもナレッジベースにアクセスできるというメリットもあります。
ただ、クラウドソリューションの使用には、セキュリティ上の脆弱性と IT コントロールの欠如など、軽々しく考えるわけにはいかないリスクも伴います。あるプレスリリースの記事では、全世界規模の KM 市場が2025年までに1.2兆ドルを超えると予測されています。
ナレッジマネージメント・ソフトウェアは、製品としてたくさん市場に出回っています。導入を検討する場合は、それぞれの組織独自の要件に見合う、目的に適したものを選択してください。ほとんどはトライアル版があります。顧客サポートのみを目的としたものもあれば、より堅牢なものもあります。顧客などの人にフォーカスしたもの、データを共有したり分析したりするのに必要なテクノロジーを重視したもの、プロセスに焦点を合わせたものなど、ナレッジマネージメントにも様々なものがある点には留意が必要です。もし、それらのすべてが必要なら複数のソリューションを統合する必要があるかもしれません。
どう進めるかは組織ごとに異なりますが、どのような決定をする場合でも、健康状態に関する情報、金銭関係の情報、個人を特定できる情報(personally identifiable information、PII)などについてはコンプライアンス要件を満たす必要があります。
AI やその他の手法を使用して非構造化データから情報を抽出することも可能ですが、その前にどれぐらいの量のデータを収集する必要があるのかを検討してください。運用のアクティビティに必要なデータのみを収集することをお勧めします。
An Irishman based in Hong Kong, Michael O’Dwyer is a business & technology journalist, independent consultant and writer who specializes in writing for enterprise, small business and IT audiences. With 20+ years of experience in everything from IT and electronic component-level failure analysis to process improvement and supply chains (and an in-depth knowledge of Klingon,) Michael is a sought-after writer whose quality sources, deep research and quirky sense of humor ensures he’s welcome in high-profile publications such as The Street and Fortune 100 IT portals.
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